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2017年

2017年7月25日
燃えるごみの焼却残さから機能性材料を製造
-都市ごみ清掃工場から排出される溶融スラグを高比表面積シリカに変換-

三井造船株式会社(代表取締役社長 田中 孝雄)及び国立研究開発法人 産業技術総合研究所(理事長 中鉢 良治氏)触媒化学融合研究センターは共同で、都市ごみ清掃工場から排出される溶融スラグを原料として高比表面積シリカを製造する技術を開発しました。

都市ごみ等の一般廃棄物を焼却処理する清掃工場では、ごみ焼却に伴って焼却灰が発生しており、主に最終処分場に埋められています。現在、焼却灰の減容化のために、焼却灰を高温で溶融させた後に、「溶融スラグ」とよばれるガラス状固形物として回収する処理が広く行われており、道路用のアスファルト骨材やコンクリート用骨材等への有効利用が図られています。一方、現在全国で約80万トン/年もの溶融スラグが、自治体等の都市ごみ清掃工場から発生しており、更なる有効活用の手段が求められています。

本研究において、ごみ処理清掃工場から排出された溶融スラグを、特定の条件下で酸性の溶液を用いて化学的に処理すると、純度93~98%を超えるシリカを容易に得ることができます(図1)。窒素ガス吸着測定の結果より、算出した比表面積はおよそ600 m2/gであり、これは高比表面積材料として市販されている合成シリカ材料と同等以上の値です。 得られた高比表面積シリカは、各種吸着剤、タイヤや合成ゴム等の添加剤、触媒担体、化粧品、歯磨き粉の研磨剤など様々な用途展開が期待できます。

また、このスラグからシリカを得るための化学的処理を、空孔をつくる鋳型となる界面活性剤を共存させた状態で行い、得られた白色固体を550℃で焼成することで、規則的なナノサイズの空孔を有するメソポーラスシリカを得ることができます。スラグから生成したメソポーラスシリカの比表面積は675m2/g、平均細孔径は9.2 nmです。図2に得られたメソポーラスシリカの電子顕微鏡写真を示します。
メソポーラスシリカは、高機能調湿剤、薬物伝達システム、酵素担体としての応用展開が期待されている材料です。

この技術では、人々の日々の活動の結果、一般廃棄物として排出された「燃えるごみ」の中に含まれる不燃成分を、容易な工程で高付加価値材料に変換することが可能です。

今回開発した技術は、現在利用が限られていた溶融スラグに対して、高比表面積シリカを含む幅広い応用につながり、今後の溶融スラグの高度利用の可能性を拡大することができます。また廃棄物を再利用する技術であり、機能性材料製造の省エネルギー化・二酸化炭素排出削減に貢献することができます。

当社は、今年創立100周年を迎え、昨年に2016年度~2025年度にかけての長期の方向性を示す「2025ビジョン」を発表しました。その中で、これからの10年間に総力をあげて注力する領域として「環境・エネルギー」を掲げています。環境保全とエネルギー創出はこれから社会が確実に必要としているテーマです。自前主義に固執せず、外部リソースを積極的に活用して、新しい価値を生み出していきます。
今後もエネルギーや廃棄物の有効活用を通して、持続可能な地球の未来に貢献します



図1 原料の溶融スラグ(左)と合成した高比表面積シリカ(右)


図2 溶融スラグから合成したメソポーラスシリカの電子顕微鏡写真
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