世界初、センサレス制御技術を採用した高耐放射線性廃炉作業向電気機械式マニピュレータの共同開発成功

株式会社三井E&Sマシナリー（社長：岡　良一）とドイツのヴェリッシュミラーエンジニアリング社（社長：Claudia Reich）(＊1)は、廃炉作業向として、世界で初めてセンサレス制御技術を採用した、耐放射線性が従来の2倍以上となる電気機械式マニピュレータ（＊2）を共同開発致しました。

本開発は、福島廃炉向けのマニピュレータの耐放射線性の目標仕様値（線量率10kGy/h、集積線量2MGy）を目指し、約3カ年をかけて、電気機械式マニピュレータの全部品の耐放射線性の向上と位置センサを不要とする（センサレス）制御システムの開発に成功しました。
この結果、現行の耐放射線性1MGyを2MGyに倍増させると共に、必要な配線数の半減を達成しております。
なお、耐放射線性は、照射施設で実際に全部品に同等のガンマ線照射した後、絶縁特性や機械強度等に劣化がないことを試験することで、確認しています。

本開発の成功により、結果として、マニピュレータの交換頻度が半減し、かつ必要配線が半減するため、廃炉作業によって発生する二次廃棄物(＊3)についても大幅に削減が可能となります。

また、マニピュレータには、液圧式(油圧、水圧等)、電気機械式がありますが、当社の電気機械式マニピュレータは、以下の特徴により、廃炉作業における多様な用途に適用ができ、仕様変更にも柔軟な対応が可能です。

・広い動作範囲 :アーム関節部は配管等がなく、電気配線の回転制限がない構造のため、動作に制限が少なく、動作範囲を大きく取ることが可能
・モジュール化：上腕、下腕、手先等がモジュール化されており、用途に応じたアーム長等の仕様変更が可能であり、各モジュールの遠隔着脱も可能
・特殊環境対応：水中(IP68)、防爆仕様(Zone 0)の対応が可能

なお、初号機は、現在製作中で、2018年9月末に、弊社玉野機械工場での公開を予定しています。
株式会社三井E&Sマシナリー及びヴェリッシュミラーエンジニアリング社は、廃炉事業への貢献を図るため、今後とも、特殊仕様の各種ロボットシステムを提案してゆく所存です。

（＊1）ヴェリッシュミラーエンジニアリング社
1946年に創業された、世界的に評価されているドイツの原子力用マニピュレータ専業メーカで、これまで世界数十カ国に約3000基の納入実績（電気機械式マニピュレータ148基、機械式マニピュレータ2800基以上）があります。日本国内では、株式会社三井E&Sマシナリーと原子力施設向のマニピュレータ分野で約30年間の提携関係にあり、これまでに220基以上（同11基、同210基以上）の納入実績があります。

(＊2)マニピュレータ
腕型のロボットを指し、高温，高圧，高放射能など人間が直接作業できない環境中での作業を行う装置。機械式、電気機械式、液圧式(油圧、水圧等)があり、ヴェリッシュミラーエンジニアリング社は、機械式、電気機械式で世界有数の専業メーカー。

（＊3）二次廃棄物
廃炉作業によって発生する汚染廃棄物。マニピュレータも交換に伴い廃棄物となる。