project

プロジェクト

Shell Ocean Discovery XPRIZE

海中ロボットで海底地図を作成する、
「未来の技術」への挑戦が進行中!

XPRIZEとは未来に向けた新たな技術への挑戦を促す、世界的なコンペティションの名称だ。有人弾道飛行や月面無人探査などと並び、深海の分野でも海底の高精度3Dマッピングの技術を競うコンペが始まった。その日本代表チームに三井E&S造船も加わっている。

各務 均

Hitoshi Kakami

三井E&S造船(株)
特機・水中機器担当
[主任]

深海版XPRIZEが目指すのは3D海底マッピング

 XPRIZE財団が主催してきたコンペティションとしては、民間による最初の有人弾道宇宙飛行を競うAnsari XPRIZEや、同じく月面無人探査を競うGoogle Lunar XPRIZEがよく知られている。舞台となるのは宇宙だけでなく、今回はその深海版といえるShell Ocean Discovery XPRIZEだ。
 「コンテストは2回に分けて行われ、Round1では水深2,000メートルの海域で、最低100平方キロメートル以上の海底の3Dマップを作成しなくてはならず、Round2ではさらに難易度が上がり、水深4,000メートルで250平方キロメートルのマッピングに挑まなければなりません。いずれも、現在の海底探査のレベルを大きく超えているので、技術的にかなり困難な挑戦になります」
 そう語るのは、海中ロボットなどの開発を手掛けてきた各務 均だ。三井E&S造船は技術提案書の審査を経てRound1に進出した世界19チームのうちの一つ「Team KUROSHIO(*)」に参加している。全チームの約半数はアメリカのチームだが、あとは日本も含めて各国1チーム(*)ずつであるため、事実上のナショナルチームといえる。
 「もともと、Team KUROSHIOは国立の大学や研究機関の研究者が発起人となり、そこに必要な技術をもつ企業が加わって結成されたので、産・学・官による日本代表チームであることは間違いありません。だからこそ、その一員に私たちが選ばれたことに強い誇りを感じています」

日本が得意なロボット技術で勝負したい

 Shell Ocean Discovery XPRIZEが面白いのは、調査は無人で行うこと、といった深海探査を競うためのルールは示されるものの、手段までは規定していないという点だ。従って、技術力に加えて発想力や企画力も試される。
 「手段は自由ですから、海面から調べてもいいし、ドローンで空中からといった大胆なやり方も考えられるのです。Team KUROSHIOでは無人の自律型海中ロボット(AUV)(*)が自走して海底を調べ、やはり無人の洋上中継器(ASV)(*)がAUVを監視するという方法を考えました」
 しかしながら、海底に近づけて、しかも調査海域を縦横無尽に回れるAUVは機能だけを考えれば最も有利であるものの、ASVとの組み合わせを含めて、現状では、まだ発展途上の段階にある。そのため広域海底探査という厳しい課題に応えられるか、不安の声も多い。それでも、彼らがこの方法にこだわったのは、そこに未来への希望を感じたからだ。
 「AUVによる海洋の探査はすでに始まっていますが、現状では専用の支援母船に人が乗り込み、ずっと監視していなければなりません。さらに調査海域におけるAUVの展開や回収なども人手による作業であり、残念ながら、あまり効率的なシステムとは言えないのです。今後、海洋探査のレベルを高めていこうとすれば自動化が最重要テーマになるだけに、私たちはAUVとASVによる無人海底探査システムにこだわりました」

成果だけでなく、プロセスこそが楽しみになる

 今回のプロジェクトにおいて三井E&S造船のエンジニアが開発を進めているのは、自動探査システムの中核となる洋上中継器(ASV)だ。
 「AUVは東京大学生産技術研究所と海上技術安全研究所が運用している3機を使いますが、当社はこれらの開発にも携わっており、その実績から重要な装置の担当を任せてもらえることになりました」
 ASVのミッションにおいて困難な課題の一つといえるのが、AUVの複数機同時管制だ。
 「従来では1機のAUVに対して有人の支援母船1隻で監視し、運用を行っています。しかし今回は、複数機のAUVに対して無人のASV1機で監視し、我々がいる陸上の基地局との間を中継できなければなりません。常に波や海流がある水面や水中でどうすれば安定して通信できるのかなど、課題は尽きません」
 未来への挑戦がテーマだけに、その難しさは通常の製品開発の比ではない。それでも、各務がこの仕事を楽しいと思うのは、着実に前に進んでいると感じられるからだ。
 「Shell Ocean Discovery XPRIZEは賞金総額が700万ドルに達することから、ニュースなどではそこが強調されがちなのですが、私たちが目指しているのはお金ではありません。こつこつと開発を進めていけば、テストするたびに精度は少しずつでも上がり、そのたびに達成感が味わえます。そういう一つ一つのプロセスこそが、チームメンバー全員にとって“賞金”なのだと思います」

*Team KUROSHIO

国立大学法人東京大学・生産技術研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、国立大学法人九州工業大学、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(海技研)、三井E&S造船株式会社、日本海洋事業株式会社、株式会社KDDI総合研究所、ヤマハ発動機株式会社による産学官の混成チーム。

*各国1チームずつ

Shell Ocean Discovery XPRIZEの公式サイト(https://oceandiscovery.xprize.org/)によると、2017年10月現在、エントリーしているチームの国別内訳は、アメリカが10、日本、フランス、イギリス、ドイツ、スイス、ポルトガル、カナダ、インド、ガーナがそれぞれ1となっている。

*AUV(Autonomous Underwater Vehicle)

あらかじめ定められたコースや範囲を自律的に航行し、観測を行う水中ロボットのこと。

*ASV(Autonomous Surface Vehicle)

海中から洋上または陸上への通信を仲介するために必要となる洋上中継ロボットのこと。

private

愛車で岡山県のあちこちを回ったり、青春18きっぷでのんびり移動を楽しんだりと、いろいろな旅を続けている。学会への出張も楽しみだ。

mydream

AUVやASV、ROV(Remotely Operated Vehicle=遠隔操作型無人潜水機)など無人機の技術をとことん究めたい。それにより深海の探査技術が上がれば、いつかは深海都市といったSF的な世界も実現できると信じている。

採用トップページへ