当社グループは、気候変動の問題を重要なサステナビリティ課題の一つと認識しています。当社コア事業の特徴としては、製品製造による温室効果ガス(GHG)排出量よりも当社グループの製品稼働によるGHG排出量の方が多くなることが挙げられます。この状況を踏まえ、気候変動問題をマテリアリティとして事業課題に落とし込み、排出量削減に寄与する製品開発に注力することで、脱炭素社会の実現に貢献します。


戦略

気候変動に関するリスク・機会それぞれのシナリオ分析を行い、当社グループの事業・経営基盤に直結するものをマテリアリティに設定し、事業戦略に落とし込んでいます。

  2℃シナリオ 4℃シナリオ
分析結果 ・炭素税導入やCO2排出規制による製造コスト増(リスク)
・低炭素化推進による非化石燃料製品の需要拡大(機会)
・CO2排出規制等の政策が推進されず異常気象の激甚化(リスク)
・異常気象の被災回避/早期復旧のため当社が代替調達先に(機会)
インパクト 機会による当社利益増加がリスク増加より大 生産拠点への物理的リスクのインパクト大
取るべき対策 ・非化石燃料を使用した製品の開発・市場投入
・工場の化石燃料や電力の使用量削減、グリーン電力使用によるCO2削減

・台風・高潮被害を防ぐ防潮堤の整備
・生産活動における安全基準の整備・強化

2℃シナリオ分析結果

マテリアリティ「脱炭素社会の実現」の設定、事業戦略への落とし込み

マテリアリティ 取り組み
脱炭素社会の実現 ・LNG・メタノール・アンモニア・水素等グリーン燃料焚き舶用エンジンの開発・販売
・水素燃料電池を活用したゼロエミッショントランステーナの開発・販売
 ・グループ会社の生産活動におけるCO2削減
舶用エンジン燃料別CO2削減率※ ・メタノール/LNG:-5〜24%
・アンモニア/水素:-95%

※対従来燃料比(重油)


指標と目標

マテリアリティ:脱炭素社会の実現

目標①

環境対応製品の2022〜30年度 累積販売・稼働台数によるCO2削減
▲1,000万t-CO2/年以上※1

目標②

グリーン電力拡大による生産活動のCO2削減
▲1.0万t-CO2/年以上

環境対応製品の累積販売・稼働台数によるCO2削減

現在の進捗

目標に向け、舶用エンジンでは新燃料エンジンの開発、生産体制整備を進めています。港湾クレーンでは、世界初の水素燃料電池搭載クレーンを開発し、市場投入を行いました。

①新燃料対応に向けた生産設備の増強

  • 二元燃料エンジン試運転台の増設
  • LNG燃料供給設備増設
  • 水素・アンモニア供給設備新設
アンモニア供給設備

②世界初水素燃料電池搭載ゼロエミッショントランステーナ商業運転開始

  • 当社及び米国子会社のPACECOが、米国ロサンゼルス港において、世界初となる水素燃料電池を搭載したトランステーナの商業運転を開始しています。
  • 米国カリフォルニア州のロサンゼルス港及びロングビーチ港は2030年までにすべての荷役機械をゼロエミッション化するClean Air Action Planを掲げており、当社はゼロエミッションクレーンの供給により貢献していきます。
ゼロエミッショントランステーナ

ガバナンス

気候変動を含むSDGsリスクを事業リスクの一つと位置付け、リスクの顕在化の防止に努めています。経営企画部担当役員を委員長とする「内部統制委員会」で、気候変動関連の課題を含む経営に関するリスクをモニタリングします。その結果に重要事項がある場合は、取締役会に報告し、議論を行います。

ガバナンス体制


リスク管理

先述の内部統制委員会で、マテリアリティに対する当社グループの取り組み状況のフォローアップを以下の手順で行っています。

短期・中期

  対象 確認方法

①現状把握
(年間CO2削減量調査)

低炭素化製品の開発進捗 中長期経営計画の開発スケジュールで確認
当社グループ製品CO2削減量 生産馬力・販売数、工場試運転時計測の燃費にて算出し確認
グループ会社の生産活動におけるCO2削減量 年間のエネルギー使用量実績を確認
②評価 各年度目標との乖離を評価
③管理 不足があれば、当社事業部門・コーポレート部門(経営企画部や人事総務部)と事業会社へ改善策立案を指示

長期

①シナリオ分析再実施
②マテリアリティ見直し要否確認

Scope3排出量算定と第三者機関による認証

当社グループの掲げる、マテリアリティ目標を達成するためのステップとして、当社のScope3排出量の算定を2023年度実績分から開始しています。
さらに、これら算定数値の正確性を担保すべく、2023年度分からGHG排出量に対する外部の第三者機関、SGSジャパン株式会社による認証を取得しています。
2024年度は同社のコメント・協議により、2023年度よりも対象範囲を拡大して集計しています。

当社認証範囲の2024年度 CO2排出量
Scope分類 排出区分 23年度排出量
(千t-CO2)
24年度排出量
(千t-CO2)
24年度排出量  (昨年の認証範囲による集計値) 
Scope1 自社内の燃料の消費による直接排出(*1)     41.6     43.7  (41.3)
Scope2 自社内の電力消費による間接排出(*1 *2)   34.8        39.7  (33.6)
Scope3 1. 調達品製造時の排出 (*3)
2. 資本財導入時の排出
3. 燃料・エネルギーの生産時の排出(*1 *2 *4) 
4. 輸送・配送(上流)時の排出(*5)
5. 事業から出る廃棄物処理時の排出
6. 従業員の出張による排出
7. 従業員の通勤による排出
9. 輸送・配送(下流)時の排出(*6)  
11. 販売した製品の使用による排出
         752.0
18.6
   4.5
            1.2
1.6
0.3
1.0
        16.9
1,409.5
         831.8
26.8
    12.5
             18.9
2.4
0.3
1.0
        0.0
1650.4
(768.1)

(4.6)
(1.3)



(17.6)

  注: 24年度の認証範囲と前年度からの変更点 
*1: 生産拠点   24年度  当社4拠点玉野・玉原・大分・千葉に三井造船特機エンジニアリング㈱玉野・玉原・千葉+三井ミーハナイト・メタル㈱玉野の4拠点追加し合計8拠点を集計
23年度  当社玉野・玉原・大分・千葉 計4拠点分のみ
*2: 非生産拠点 24年度 当社本社および同ビル内の㈱三井E&Sエンジニアリング・ 三井E&Sシステム技研㈱・㈱三井E&S DU 計4拠点を集計
23年度 同上
*3: 24年度 資機材分及びサービス分を含む
23年度 資機材分のみ
*4:  24年度 電力および燃料生成のための排出量
23年度 電力の生成のための排出量のみ
*5:  24年度 認証機関のコメントに基づき、当社が手配した下流の輸送の排出量も含む

23年度

上流の輸送による排出量のみ
*6:  24年度 認証機関のコメントに基づき、当社が手配した下流の輸送の排出量集計はカテゴリー4に移管。その結果、他に対象はなく本項目は0トンとなる。
  23年度 下流(各事業の製品)の輸送分を集計
GHG排出量に関する第三者認証を取得

SGS検証意見書