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コンテナ用ヤードクレーン「トランステーナ」嵩上げ工事

三井E&Sマシナリー
テクノサービス事業部 運搬機サービス部 京浜営業所 所長代理 廣岡 隆宗さん (左)と
テクノサービス事業部 運搬機サービス部 京浜営業所 技術グループ長 坂本 義和さん (右)

顧客との距離。

顧客の近くで同じものを見つめる。
アフターサービスにとって最も重要な視点

顧客との距離。

コンテナ用ヤードクレーン「トランステーナ」嵩上げ工事

きっかけは挨拶で交わした言葉から

コンテナを置くヤードが足りなくて困っている─。

コンテナクレーンのメンテナンス業務に携わる廣岡は、定期的な挨拶のために顧客事務所を訪れたある日、そんな話を耳にする。廣岡は、すぐに海外でトランステーナ嵩上げ工事の実績があることを伝え、こう続けた。

「既存のコンテナ4段積みトランステーナを、5段積み対応に嵩上げしてはどうですか? 同じヤード面積でもコンテナ蔵置量を大幅に増やすことができます」

制約のなかで始まった工事

廣岡の提案はすぐに受け入れられ、2018年に東京都青海埠頭第4バースでのトランステーナ嵩上げ工事を受注。全8基のトランステーナをコンテナの5段重ね置きに対応させる改造工事がスタートする。

工事の実績はあるが、国内では初めての事例。工程を組む段階でまず課題となったのが、日々稼働しているヤード業務を止めずにどうやって実施するかだった。現場を担った坂本は振り返る。
「ヤード内に工事スペースを確保し、対象のトランステーナを移動させて1基ずつ工事します。ただし移動できるのはヤード業務が始まるまでの早朝。だから毎日のようにお客様の業務状況を確認して、ご迷惑がかからないように調整しました。

しかも、決められた作業スペースにトランステーナを移動させるためには、操舵装置のないトランステーナの向きを車輪の回転差でじわじわと変えなければならず、思いのほか手間と時間が必要でした」

さらに、「一日でも早く完工させたい」という顧客の強い要望により、当初計画していた工期には短縮が迫られた。

トランステーナ

[写真説明]脚下部切断後、ジンポールに吊り上げられるトランステーナ

工期短縮というニーズに応えるために

工事概要は、トランステーナの脚下部を切断してジャッキで吊り上げ、嵩上げ分の脚を溶接するというもの。シンプルに聞こえるが、現実にはさまざまな課題が立ちはだかる。

「たとえば、ヤードの地面には海側に雨水を流すための水勾配がつけられていますが、作業用のジンポールを垂直に建てるためには、コンクリートで土台を作って水平を出す必要がありました(上写真参照)。

また、トランステーナを吊り上げるときも水勾配が課題となります。トランステーナを水平に保ちながら吊り上げなければ、正確な形状に改造することが難しいのです(図1参照)」

トランステーナ

自走式のトランステーナを一度分断するだけに、全体の剛性やバランスが崩れないように作業精度には細心の注意が求められる。

「梁の役割を果たしている下部のシルビームから脚を分離するので、全体が歪まないように事前に補強材も組んでおく必要があります。さらに、切断後の溶接はジャッキで吊りながらの作業であり、設計通りに完成後のバランスを得るにはミリ単位の精度で行わなければなりません」

また、脚の嵩上げに伴って電気系統を延長する工事も必要。すべては屋外での工事となるため、天候の影響も加味しなければならない。

「それでも、各作業を同時並行で進められるようにするなど、人や部品の手配などを含めたあらゆることを見直し、徹底して工期短縮できるように努力しました」

坂本は、限界まで工期を詰めるべく、実工事が始まってからも工程表を修正し、1、2基目では1カ月ほどかかった工期を、以降は約3週間にまで短縮する。

「とにかく自分の考えたことを書き出して、何度も何度もお客様や現場スタッフとの打ち合わせを繰り返しました。すぐ近くにいるからこそ、できたことなのだと思います」

アフターサービスに求められるもの

日常的な挨拶で交わした言葉を見落とさずに、受注の機会を拾い上げた廣岡。毎日何回も打ち合わせを重ねながら顧客の要望に応えた坂本。

この工事を成功させたのは、彼らの“顧客との近さ”にほかならない。それは、テクノサービス事業部が担うアフターサービスにとって、最も重要な提供価値とも言えるだろう。

ときに製品販売のメリットと比較されることもあるアフターサービス。なぜ嵩上げ工事だったのかの質問に、廣岡はこう答えた。

「最終的にはお客様が何を重要視されたのかということだと思いますが、緊急性、費用、トランステーナの耐用年数など、総合的に判断されてのことだと思います」

顧客の近くで、顧客の感覚を肌で感じ、顧客と同じ方向を見つめる。正しい答えは、その先に見えてくるはずだ。

※記事の内容は取材当時(2021年1月)のものです。

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